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義歯をドローンで輸送する世界初の実証実験を実施

災害時の新たな歯科医療物流モデルの可能性を確認
2025年11月26日(水)、鎌倉ドローンフィールド(小泉園/大船飛行場)にて、ドローン・アイティー株式会社、オーガイホールディングス株式会社、日本遠隔医療学会 歯科遠隔医療分科会(会長:長縄拓哉)の共同プロジェクトによる、義歯をドローンで輸送する世界初の実証実験を実施しました。
本実証は、災害時における歯科医療支援の新たな物流手段の確立を目的としたものです。

■ 実験概要
● 実施日時
2025年11月26日(水) 13:00~
● 会場大船飛行場(鎌倉ドローンフィールド)
神奈川県鎌倉市城廻130

写真1:会場となった鎌倉ドローンフィールド

● 主な実施内容
 – 上下総義歯(デジタルデンチャー・総重量約100g)のドローン輸送
 – 自動航行と手動航行の比較
 – 目視範囲内飛行および目視外飛行(BVLOS)の検証
 – 災害時を想定したラストワンマイル配送シナリオの評価

写真2:輸送した義歯(上下総義歯とナイトデンチャー、どちらも3Dプリント義歯)

■ 実験結果
① 橋の崩落を想定した対岸への空輸(距離42m・輸送高度20m)
ドローン機体下面にクリップで固定した紐(約2m)先端に義歯を入れた箱を取り付け、対岸へ3回輸送しました。

写真3:輸送用の箱(輪ゴムは必要なかったため輸送前に除去した)
写真4:使用したドローン(Matrice 4T)と搭載物の装着状況

●上昇・飛行・受け渡し・帰還すべて問題なし
●義歯の破損なし
●1回目は箱のみ取り外して受け渡し、ドローンは着陸せずに帰還
●風の影響で紐が揺れ、着陸時の絡まりリスクがあるため、「受け渡し時はドローンを着陸させ紐ごと取り外す方法が安全」と判断
●3回目は受け渡し後、操縦器(プロポ)の電源切れで帰還不可となる事象を確認
●飛行全体が約7分、受け渡しまで約3分で完了
●目視外飛行となったのは着陸時のモニター確認中
●天候:晴れ/気温20度/風速5〜8mとやや強風

写真5:飛行時の様子

② 崖下を想定した回収ミッション(距離61m・マイナス高度19m)
義歯のある地点までドローンを着陸させ、現地で義歯を取り付けて出発点へ戻す実験を2回実施。
 ●目視外飛行で実施
 ●片道到着まで約4分、義歯取り付け30秒、全工程9分以内
 ●箱が途中で傾く場面もあったが安全に帰還
 ●義歯に破損なし

写真6:崖下に着陸した機体
写真7:受け取り後、義歯の破損等は認めなかった

■ 運用面の知見
●操縦者、歯科医師役、受け取り担当、トランシーバーでの指示係など、最低5名の人員配置が必要
●義歯輸送そのものは問題なく行えるが、現場で安全管理と指示を行う人員の配置が非常に重要
●有害事象は認められず、安全に実施完了

■ 背景
大規模災害時には、高齢者の約5人に1人が義歯を紛失すると言われています。
義歯の喪失は、咀嚼機能の低下だけでなく、誤嚥性肺炎リスク、栄養障害、認知機能低下など多くの健康問題を引き起こします。
デジタルデンチャーや医療MaaSの発展により、現地での義歯再製作体制は整いつつありますが、「どう届けるか」という物流面がこれまで大きな課題でした。
今回の実証実験は、この課題に対する新たな解決策の一歩です。

■ 長縄拓哉(日本遠隔医療学会 歯科遠隔医療分科会 会長)のコメント
「義歯輸送は小さな試みに見えるかもしれませんが、その背景には“命をどうつなぐか”という大きな問いがあります。
災害時や離島など医療が届きにくい場所でも、歯科医療が担える役割は必ずあります。この小さな一歩から、医療者がドローンを扱う意義について共に考えていければと思います。」

■ まとめ
今回の実証実験では、義歯をドローンで安全かつ確実に輸送できることが確認され、多くの実運用上の知見を得ることができました。
本取り組みを通じて、災害時や医療過疎地における新たな医療物流インフラの構築に寄与してまいります。

写真8:実証実験を行った長縄歯科医師とドローンインストラクターの皆さま

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